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大学群

 大学がもらう次年度の運営費交付金がどうなるか? そのことがしばらくの間、人の話題に上っていた。その件が省庁間の折衝を経て結論が出た、という紹介が最近あった。かなりの減額、という心配もあったけれど、数字を見ると大きな減額はない。むろん、個別大学の予算額はまだ分らない。
 ではそれで一安心かというと、そうでもない。文科省と協議して財務省が出したらしいその文書は、国立大学の改革を強く求めている。その改革の方向性を記したA4の1枚(基本的な考え方)の中身は、これまでの議論の延長上ともいえるが、かなり明確に方針を述べている。主なポイントは、有体に言えば次のごとくである。

・国立大学のあり方を変えて行く。(改革、機能強化、交付金配分基準)
・国立大学を、重点化拠点大学/特定分野大学/地域貢献大学に分けて考える。(名称は便宜上私がつけた略称である。)
・国立大学間の連携協力システム、特に「大学群」を創出する。一法人複数大学などの制度整備も検討する。
・財政措置はするが、文科省内タスクフォースの検討を経て、大学群の規模や機能は政府が決める。

 見どころは多い。
 第1に、財政支出にメリハリをつける考えが強く出ている点である。支援すべきものは支援し、整理すべきものは整理する、が基本であるようだ。その上で、支援すべきもの、機能は何か、で議論を整理している。
 第2に、国立大学を上記の3つに分けたことである。従来は「機能(別分化)」や「個性」といった言葉をよく使った。機能や個性なら「いろいろあります」で終わる。が、そうした機能や個性とは別個に、単純明快に、国立大学を3つに整理して見せた。地方国立大学は最後の地域貢献大学になるしかない。「個性」といったことは、この区分とは別に「考えてください」になるのだろう。
 第3は、あえて「大学群」と言っていることである。「大学群」の語がどの辺から登場したのかは確認していないが、従来の「連携」よりは踏み込んだ印象がある。
 第4は、細かな「個性」は各大学の検討に委ねるとしても大枠は政府が決める、という点である。

 最も注意を引くのは「大学群」である。単にネットワークでつながった「大学群」程度の意味にもとれる。が、あえて一法人複数大学方式を例示していることを考えると、経営統合を考えているようにもとれる。
「大学群」の意味には次の3つがあるように思う。

1) 別経営の大学が群になることで機能強化できる(と称する)場合。軽い場合は単位互換、重い場合は機関の共同設置である。ただ、実質的にはさしたる意味はない。例えば、単位互換など、制度を作っても自発的な利用者はまずいない。共同設置にしても、経営を別にする法人の間で作る機関は運営が困難であり、私が部局長なら乗らない。まして設置者が異なる法人間の共同設置は難しい。
2) 地域コンソーシアム型の破綻スキーム。県内の大学を地方国立大学を中心にコンソーシアムにまとめる、という場合である。弱い私大が破綻したときの、学生の受け皿という色彩が強い。ただ、この型の大学群は、中心となる大学の一方的な貢献によって支えられる。従って時間とともに形骸化する運命にある。
 そもそも、破綻する大学が出た場合の処理は、この種の群を作らずとも可能であり、大きな破綻が生じた場合はこの種の群でも対応できない。さして意味はないだろう。
3) 一法人複数大学方式による経営統合のケース。米国の州立大学システムのような形態である。

 上記のうち、1)と2)は「連携ごっこ」と呼ぶにふさわしい。文科省が連携をしろといい、連携の実績が求められたとき、国立大学は必死に連携ごっこをするだろう。そのときにやるのは1)か2)に決まっている。
 3)に踏み込むのは重い判断である。しかし、国にとっても大学にとっても、意味のある選択肢は3)しかない。
 一法人複数大学とは、ある意味、独法の整理の方法として、政府が検討している手法と同じである。一法人化することで共通のもの、重複するものを省き、削減の実績とする。しかし他方で、資源の集中投下が可能になるので、大学が伸びようとすればこの選択肢が実質的に意味がある。「世界を目指す」つもりならこの選択肢しかない。
 しかし、表向ききれいごとの「愛校心」が3)の選択を阻んで行くのだろう。

 当面は、政府が何を考えるか、という問題だろう。大学には、判断はできない。

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