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大学貧乏物語

 1年近く前のことである。ウチの大学がNHKの夕方の番組で取り上げられる、という話が伝わった。それは宣伝になってよいね、と部内で話し合ったものである。
 その番組を私は見ていない。が、ご覧になった方がある会合で話題にした。その番組、最初のうちは良かったんだけれど、大学にお金がないという話になって、古いコンピュータを無理に使っているような内容になった。あれでは受験生が逃げるではないか、あんなこと放送させちゃダメじゃないの、というものだった。

ヘ(゚∀゚ヘ)  アホですね。何考えてんでしょうね。
´ω`)ノ 私は見てないからなぁ。
(`δ´)  そりゃ、ダメだよな。金がなくてもやせ我慢して、あるような顔をしないと、学生は来ないよね。あそこ行ったら、ひどいんだぁ、になっちゃうもんな。

 そんな話があったので、番組を見ていない私はNHKのサイトでその番組の情報が出ているか、調べてみた。ウチの大学の番組のページがあった。確かに、貧乏くさい写真入りで番組の紹介が載っている。この大学、いいですよぉ、というよりは、頑張っていますけれども今の国立大学は財政的に苦しいです、みんな暗い顔して議論してます、という感触が強く出ている。
 この貧乏くさいストーリーラインを考えたのは、NHKなのか、ウチの大学なのか、そこは私は存じ上げない。NHKも「貧乏」というテーマで話を作るのが好きなところがあるので、そういう見方で番組を作った可能性もある。

 ウチの大学が予算を切り詰めているのは事実であり、財政的に厳しいことは私も実感する。ただ、予算が極端に削減された訳ではなく、どのような方針で、どのような優先順位で大学を運営しているか、という問題もある。一概に金がないといえるのかどうか、そこは多くの大学構成員にとって、よく分からないことだろう。

 ウチの大学の内外には、このままでは大学はやっていけない、これだけの国からの予算が必要だ、と(世間なり政府なりに)申し入れろ、という意見がある。
 しかし、そのような申し入れをすべきか、できるのか、という点で私には疑問が残る。
 第1に、そのような議論を世間に振り撒いた場合、ウチの大学は「存立が危ない大学」であると宣伝するようなものである。受験者は逃げるだろう。そんな危ない大学に子供を送ろうとする親もいない。広報的に、そんな議論をするのは無理と思える。
 第2に、それならまず、自己収入を増やす努力をしなさい、になるだろう。自己収入とは、畢竟、授業料を上げることである。現状では国立大学は一定の範囲で授業料を設定できる。まずそれをしなさいの話になるだろう。
 大学関係者にもずれた方々がいて、国立大学の役割は等しく教育機会を与えることであるから、授業料は上げられないと論じる方が(まだ)おられる。しかしそう論じる人は、法人化をする前後の議論を知らぬのだろう。貧しくても大学教育を受けられることは重要であるが、対処としては貧しい人への個人補助をすべきであり、機関補助として大学に金を付ける必要はないのである。そもそも所得が低いことは国立大学の入学要件にはなっていない。金持ちでも国立には入っている。国が貧しい人への奨学金を充実させることが正攻法ではあるが、そうしなくても、一般の学生の授業料を上げて、貧しい学生には授業料を免除(ないし奨学金付与)すればよい。そこは大学の判断でできることである。
 あのNHKの番組のように、理系の教育に必要なPCが買えないというなら、理工系学生からは設備費を取ればよいだけだろう。貧しい学生には、むろん免除すればよい。
 第3に、大学にお金をくださいという主張は、一大学でやれることではなく、一群の大学(例えば地方国立大学群)がやるしかないが、社会的ディレンマが働き、どの大学も自らは何もせずに他大学に先頭を切って主張することを期待することになるだろう。結局は言い出せずに終わる可能性が高い。

 今後の財政展開から考えて、ポジティヴなシナリオの可能性は2つしかない、と個人的には昔から考えている。1つは経営陣にお金を取って来てもらうことである。むろん、誰か都合の良い方を学長にすればお金を取って来られる、というものではない。投資を呼び込めるだけの大学のプランを作る必要がある。そのためには、地方国立大学の場合、複数の大学を経営統合する以外にないだろう。
 もう1つは、今の大学を低額の予算で成り立つような構造にすることである。ただその構造とは、今の執行部が掲げているものと同じではない。
 何れかを選択すべきであるが、何も選択できず、現状のまま少しずつ予算を切り詰めて生き残ろうとすることが、現実には一番選ばれやすいと思ってしまう。

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