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続・ウチの教養学部はどこが弱いのか?

 少し前の記載「ウチの教養学部はどこが弱いのか?」ではこの学部の構造的な弱さを述べてみた.むろんこの学部,強いところもあるのであるが,今は弱さに着目してみたのである.
 この記載では「政治的な事情」での弱さについて述べてみる.政治的とは,いろんな意味でのCampus Politicsを指す.

 まず指摘すべきは,この学部は埼玉大学の中で政治的に最も弱いことである.
 埼玉大学では「理工」と「教員養成」が2大勢力である.この2つは大学運営の中で「外される」ことはない.大学の執行部はこの2つに基盤を置けば盤石であり,実際,この2つを基盤に執行部ができている.法人化初代の学長の出身は理であったが,理と工が一部局化していた.しかし初代学長が最も配慮していたのは教員養成学部であった.2代目学長の選出過程では教員養成学部は排除された格好であったが,教員養成学部のトップと2代目学長はもともと懇意であり,教員養成学部の立場は守られた.2代目学長は文系学部出身であるが,文系学長の常として,理工には最も配慮しているつもりだったと思う.3代目,つまり今の学長の政権は,文字通り理工と教員養成学部を基盤にできている.この3代目の型が埼玉大学の基本形である.
 こうした事情は何も埼玉大学だけのことではない.多くの地方国立大学では,学長は上位2部局くらいの中の何れかから選出され,部局の強さに応じて学内ポスト(理事,副学長,学長補佐…)が配分されるのが普通である.
 部局の強さは教員数,学生定員,資源の大きさによる.医学部がある大学では,医学部は学生数が少ないとしても,その他の資源が大きいので強い.医学部のない大学では,大きい学部は工学部と教員養成学部であり,この2つが強いのが普通である.
 教養学部は,文系学部という軽さの上に,「真水」の教員数は最小であり,何よりも学生定員が小さい.外から見ると教養学部は経済学部と同じでないかと思うかも知れないが,経済学部は学生定員が多く,したがって予算の根拠を持っている.だからこれまでも交渉ができた.教養学部はそれができないのである.
 弱小ではあっても国立時代は問題はなかった.予算などの資源は積算根拠で国から配分されるので,然るべき待遇は自動的に確保されたのである.しかし法人化以後はそうはいかない.各種資源の配分は学内ルールに基づく.そのルール形成過程では,どうしても政治力のある部局に不利なルールはできない.結果,政治力のない部局が割を食う形で落ち着く可能性が出てくるのである.
 だから教養学部は,評価される特長を強く保持しない限り辛いことになる可能性が高い.そのことを教養学部の構成員は理解すべきであるが,なかなかそうはいかないのが現実である.
 少し前,教養学部と経済学部は大学院で合併し,院部局化した.ただし学部は別々であり,ある程度,それぞれの学部はアイデンティティを維持している.ただ私は,大学院での合併の話があった時に,両学部が本格的に単一の部局化することも選択肢であろうな,とも考えた.政治的にはその方が良いかも知れないからである.

 上記は大学全体でのpoliticsの問題であった.が,それとは別に,教養学部は学部内政治によっても弱体化する可能性を宿している.
 少し前の記載「ウチの教養学部はどこが弱いのか?」で述べた通り,学部の性格から,教養学部は内部構造が不安定になる素地がある.組織の内部構造に外から枠がはめられる訳ではないため,どのような内部構造もあり,という考えに走る誘因があるからである.そうした不安定性を回避するために教養学部では専修・専攻体制があった.各専修と専攻にあるべきポスト数の最低ラインも決めていたのである.しかしそのような取り決めは無視して採用人事を決めてよいと学部長が言い出してしまうとどうにもならない.
 専修専攻を無視してどのような可能性があるかというと,早い話が,人間関係に応じてポストが増減するということになる.例えば学部執行部に人を出しているところにポストが付き,人を出していないところは冷遇される,といったことである.
 例えば,執行部に人が出ていない特定の専修,まあグローバル・ガバナンス専修であるが,そこに対しては,長期研修に出た人がいたんだからお前のところは人が要らないんだろう,と正副学部長がいったらどうであるか? 長期研修は研究上の権利として守られているはずであったが,それである専修・専攻に最低ラインのポストもなくなってしまうとすれば,そりゃ,長期研修に出た若い先生は傷つくだろう.自分が長期研修に出たからポストを剥奪されたのか,ということになる.むろんそんな酷いことは,グローバル・ガバナンス専修に対してしか,彼らも言う訳がない.
 こうした不可解な問題が出得るのは採用人事ポストだけではない.実験室スペースにしても,最近の執行部の措置により,現代社会専修はグローバル・ガバナンス専修の実に4倍の実験室スペースを保持するようになったのである.4倍というのはひど過ぎるのではないか,是正があってしかるべきでないかと私が教授会で発言したが,学部長は聞く耳を持たない.なぜか? 良く言えば,人間関係で物事が決まる,ということであろう.
 こうなった場合,学部の構造は流動的になり,何でもありになって行く.組織のエントロピは高まる.同時に,学部としての求心力は次第に衰えてゆくしかない.
 柔軟性は必要としても,大まかな,外形的な基準を作ってその基準で物事を判断して行く,資源を配分して行くことが,弱体化を避けるための方策となるだろう.

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