« 骨太の方針2022 での大学言及 | Main | 国際卓越研究大学の行方 »

大学への「総合振興パッケージ」の薄情

(「薄情」は「うすなさけ」と発音してください.)

CSTI

 今年(2022)の2月1日付で,CSTI(総合科学技術・イノベーション会議,内閣府)は「世界と伍する研究大学の在り方について」という最終まとめを公表した.
https://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/sekai/kenkyudai_arikata_p.pdf
と同時に,同じ日付で「地域中核・特色ある研究大学総合振興パッケージ」を公表している.
https://www8.cao.go.jp/cstp/output/kenkyudai_pkg_p.pdf
 2022/6/7閣議決定した骨太の方針2022では,「世界と伍する研究大学の在り方について」が「大学ファンドから支援を受ける国際卓越研究大学」に対する措置であり,「地域中核・特色ある研究大学総合振興パッケージ」は「地域の中核大学等が、特色ある強みを発揮し、地域の経済社会の発展等への貢献を通じて切磋琢磨できるよう、産学官連携など戦略的経営の抜本強化を図る」ためのものと表現されている.たぶん,「地域の中核大学等」は,この時点では,大学ファンドの支援対象とは想定されていないのだろう.

 CSTIは議長が岸田首相であり,重要閣僚が名を連ね,有識者のトップとしてよく名前が出る上山隆大氏が入っている.議論の実質は会議の下にあるいろんなワーキンググループでなされており,通して出ているのは上山隆大氏であるから,同氏の意見が多く反映されるものと思う.しかしこれだけ複雑な会議であると出席委員は一言いって満足して終わるだろうから,結論の中身は事務方(岸田内閣では財務省・経産省の官僚)が取りまとめたものがそのまま通るのではないかと想像する.

 私見では,世界と伍する研究大学,つまり国際卓越研究大学については今さら見聞して新しいことはない.が,「地域中核・特色ある研究大学総合振興パッケージ」(以下,「総合振興パッケージ」と略)については政府筋が何を考えているかについて興味を喚起する面がある.
 以下,その総合振興パッケージについて,私がざっと見た感じを茶飲み話として書いてみたい.不正確な点はご勘弁願いたい.

総合振興パッケージが想定する大学階層

 パッケージの対象は「地域中核・特色ある研究大学」である.略さずに書けば「特色ある研究大学」と「地域中核(研究)大学」なのだろう.「特色ある研究大学」は,国際卓越研究大学には届かないけれども限定した分野の研究で世界的水準にある大学を指していると思う.典型例は金沢大学のような国立大学,ないし早慶あたりだろう.「地域中核大学」は,地方国立大学はみな該当するものと想像する.
 「地域中核・特色ある研究大学」については3つの類型が書かれているのが面白い.第1類型は「特定分野で世界トップレベルの研究拠点」を持つ大学である.第2類型は,世界トップレベルの研究拠点を持ちつつ大型の産学連携を推進する大学である.第3類型は,世界トップレベルの研究拠点は内部に持たないけれども,学外拠点と連携しつつ地域の産業振興・課題解決に貢献する大学である.
 CSTIの資料では,国際卓越大学とこの3類型が1次元で上下に位置する階層構造が描かれている.むろん上から,国際卓越,第1類型,第2類型,第3類型である.
 ここで気になるは,3類型で出てくる「世界トップレベルの研究拠点」が何を指すか,という点である.同資料では「世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)」が例示されている.しかしWPIはほとんど指定国立大学法人で認定されており,例外は金沢大学くらいしかない.だから総合振興パッケージの対象大学にWPIはないだろう.単なる「強みのある分野」ということかも知れない.
 たぶん,国際卓越研究大学を含めた4類型の下にかなり多くの弱小大学があることになるのだろう.

総合振興パッケージは何をいっているか?

 細かく検討した訳ではない私がいうのは気が引けるが,大まかにこの総合振興パッケージが何をいっているかについては,次のようなことであろうと思う.
 第1は,大学に対して上から目線で訓を垂れている.大学は研究の強みを作るべきだとか,大学間の連携をすべきだ,地域でネットワークを作るべきだといった,一般論としてはその通りであり誰も理解していることをいっている.個別の大学に対して具体的にいってくれないと,大学の方も困るだろう.
 第2に,新たに財源を動員して支援しますという印象はなく,既にあるいろんな補助金をまとめて表示することで大学の便宜を図る,という考えのように読める.「総合振興」の「総合」というのは,その補助金枠をまとめて示す,ということのように読める.いや,おそらく補助金の枠は大学の事務方は把握しているはずだから,そんなの,まとめて書いて何かプラスなのか? しかも,例示される補助金枠には既に募集を終了しているものもあるではないか?
 という訳で,この総合振興パッケージって何なのさ? 各大学に気合を入れる,という趣旨なのかも知れない.あるいは,ファンドを使わないけれども皆さんのことも考えています,といういい訳なのかも知れない.
 国際卓越研究大学にはファンドで支援しますといいつつ,その他の大学には気合だけ.嗚呼この薄情け.

 美空ひばりの晩年の名曲「乱れ髪」風にいうと:

  失せたファンドの 配分を
  祈る教員の 性(さが)悲し
  辛らや重たや 本学ながら
  沖の瀬をゆく 底曳き網の
  舟にのせたい この薄情け

|

« 骨太の方針2022 での大学言及 | Main | 国際卓越研究大学の行方 »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



« 骨太の方針2022 での大学言及 | Main | 国際卓越研究大学の行方 »