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岩盤規制に回帰する大学行政

 先日(2022/7/19)の読売ニュースに「2025年以降は薬学部の新設を認めない」という文科省方針を伝える記事が載った.
https://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/kyoiku/news/20220719-OYT1T50166/

規制改革が望ましいと思う私はヤレヤレと思った.例によって既存業界の保護のために文科省が動いたと見るべきだと思う.「薬剤師余り」があるという理由なのだが,投資する側がその通りと思えば新薬学部は自ずとできない.が,自由主義社会では,政府が許認可権で作らせないと決める話でないのである.
 この種の岩盤規制は既存業界のうちの競争力のない部分を保護するように働く.その結果として業界の代謝が行われず,イノベーションも生じにくくなり,業界全体の競争力を停滞させることになる.そういうと「新自由主義」といって批判する向きも多いのであるが,その程度のことは経済成長している自由主義国ならどこでもやっていることであり,同じような岩盤規制が社会の中に張り巡らされているから日本は経済成長できない.そして岩盤規制があることによって官庁側は保護した団体に天下り先を確保する.
 大学の岩盤規制は医学部と獣医学部で強い.安倍内閣では(医学部は既存業界が強すぎるので)獣医学部について岩盤規制を崩そうと思い,特区という仕組みを作って新設を認めさせようとした.その試みに岩盤派の既存業界と文科省が抵抗し,野党が岩盤派に味方したのが「加計問題」の本質だった.本来なら加計学園に続いて獣医学部の参入があって良いのであるが,できていないのはそれだけ抵抗が強いということなのだろう.医学部については,菅内閣が東北復興という名目で1つだけ新設を認めさせたが,その後が続かない.
 読売の記事が出た後,高橋洋一,原英史,岸博幸など改革派が,この問題を取り上げる動画をYouTubeにアップしていた.話を聞いていて「そりゃそうだよな」と思った.
 その動画には私が考えなかった論点も入っていた.第1が,薬剤師の役割が医師に都合よく制限されているので仕事も少なくなっている,という点である.いわれてみれば.米国では薬剤師がコロナワクチンの注射をしている.同じことは日本ではできなくされている.こうした規制を外していけば自ずと薬剤師の需要も多くなるのである.
 第2が,政府は業界の保護ばかりを考え(票になるからであるが),競争力のない部分の市場からの退出Exitを図らない点である.定員を充足できない薬学部は少なからずある.それらの薬学部の統合や退出を促すことをしていない.
 規制を改革し,異業種からの参入を促さないと,産業の競争力は上がらないし,新たな結合によるイノベーションも起こらない.要するに社会の活力は上がらない.日本社会のいろんな側面に同じ問題があるのだろうな,と思ってしまう.

 薬学部だけでなく,大学一般についてもいえることのように思う.もう少し動きがないと日本は沈んでいくのではないか.

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